Grand green
高血圧は日本人の約4,300万人が抱える身近な疾患であり、放置すると動脈硬化が進行し、脳卒中や心臓病、腎臓病などの重篤な合併症を引き起こします。当院では、最新のガイドラインに基づいた適切な治療・管理により、患者さまの将来的なリスクを最小限に抑えることを目指しています。
高血圧とは、血管に対する血液の圧力が持続的に高くなっている状態です。血圧は心臓から送り出される血液量と血管の抵抗によって決まります。
・診察室血圧が140/90 mmHg以上
・家庭血圧が135/85 mmHg以上
上記の基準を満たす場合に高血圧と診断されます。この診断基準は2024年4月以降も変更されておらず、誤った情報に惑わされないよう注意が必要です。
当院では正確な血圧測定に基づき、適切な診断と治療計画を立てております。まずは血圧測定から始まり、患者さまの状態を詳しく評価いたします。
血圧は以下のように分類されます:
・正常血圧:120/80mmHg未満
・高値血圧:130-139/80-89mmHg
・Ⅰ度高血圧:140-159/90-99mmHg
・Ⅱ度高血圧:160-179/100-109mmHg
・Ⅲ度高血圧:180/110mmHg以上
血圧が高いほど将来的な心血管疾患のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、放置すると以下のような重篤な合併症を引き起こします:
・脳卒中(脳梗塞、脳出血)
・心疾患(狭心症、心筋梗塞)
・腎疾患(慢性腎臓病)
・動脈硬化
これらの合併症を予防するためにも、定期的な血圧測定と適切な管理が不可欠です。
2025年8月に発行された「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、従来より厳しい降圧目標が設定されました。年齢・病態・合併症に関わらず、診察室血圧が130/80 mmHg未満、家庭血圧が125/75 mmHg未満が目標とされています。
特にこれまで75歳以上の高齢者の方は、家庭血圧が135/85 mmHg未満が目標と緩和されておりましたが、これが125/75 mmHg未満に厳しく引き下げられたことが大きな変更点です。
・診察室血圧:130/80mmHg未満(全年齢共通)
・家庭血圧:125/75mmHg未満(全年齢共通)
診察室では緊張して血圧が平常より高くなる患者さんが多いので、血圧の薬の調整は基本的に家庭血圧を優先します。当院では家庭血圧測定の指導を徹底し、正確な血圧管理を支援しております。
ガイドラインは目安であり、患者さんの背景疾患・バックグランドを全て加味した上で、患者さん毎に適正な血圧目標値を決定すべきと考えています。動脈硬化の程度や腎機能、長期間の高血圧歴などを総合的に判断し、安全で効果的な治療を行います。
高血圧治療において使用される降圧薬は、作用機序によって主に5つの系統に分類されます。当院では患者さまの病態に最適な薬剤を選択し、安全で効果的な治療を提供しております。
血管を広げて血液の流れをスムーズにし、血圧を下げる薬です。カルシウムが持つ血管を構成する筋肉を収縮させる作用を抑えることで、血管を広げます。
・代表的な薬剤:アムロジン、ニフェジピン、アダラートCR
・特徴:効果が確実で多くの患者さまに使用可能
・副作用:むくみ、顔のほてり、歯肉肥厚など
特に心臓の血管である冠動脈に作用し、心臓への血液の供給量が増加するため、狭心症の合併がある方にも適しています。
レニン・アンジオテンシン系(RA系)に働き、血圧を下げるお薬です。高血圧の他に、腎臓、心臓の保護作用もあり、腎不全、心不全、糖尿病の方にもよく使われます。
・代表的な薬剤:ニューロタン、ブロプレス、ディオバン、ミカルディス
・特徴:心臓・腎臓保護効果、副作用が少ない
・副作用:高カリウム血症(稀)
糖尿病や腎疾患を合併している患者さまに特に有効で、長期的な臓器保護効果が期待できます。
アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する薬剤です。ACE阻害によってアンジオテンシンⅡの生成が阻害される結果、血管拡張とそれに伴う血圧低下作用を呈すると考えられます。
・代表的な薬剤:タナトリル、エナラプリル、リシノプリル
・特徴:心不全に効果的、誤嚥性肺炎予防効果
・副作用:空咳が2割から3割の患者さんで認められます
水分の排泄を促すことで血液中の水分量を減少させ、血圧を下げる薬です。特に日本人に多い塩分感受性高血圧に効果的です。
・代表的な薬剤:ナトリックス、フルイトラン
・特徴:安価で確実な効果
・副作用:低カリウム血症、高尿酸血症
心臓に主に分布する交感神経の働きを抑えることで、心拍数を抑えるとともに、心臓が過剰に収縮する力を抑え、血圧を低下させる薬剤です。
・代表的な薬剤:メインテート、テノーミン
・特徴:心疾患合併例に有効
・副作用:徐脈、手足の冷え
高血圧の薬物治療では、患者さまの状態に応じた段階的なアプローチを行います。当院では最新のガイドラインに基づき、安全で効果的な治療戦略を採用しております。
積極的適応がない場合の高血圧に対して最初に投与すべき降圧薬(第一選択薬)は、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬のなかから選択します。
・カルシウム拮抗薬
・ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
・ACE阻害薬
・サイアザイド系利尿薬
患者さまの年齢、合併症、副作用のリスクなどを総合的に判断し、最適な薬剤を選択いたします。
まずはカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬またはARB、サイアザイド系利尿薬のどれかを使用(STEP1)し、不十分であればどれか2つの組み合わせ(STEP2)、それでも不十分であれば3つの組み合わせ(STEP3)という段階的なアプローチを採用します。
・STEP1:単剤治療
・STEP2:2剤併用治療
・STEP3:3剤併用治療
・STEP4:MR拮抗薬や専門医紹介
異なるクラスの降圧薬の併用は、降圧効果が大きく、降圧目標を達成するために有用です。特に推奨される組み合わせは以下の通りです:
・ARB/ACE阻害薬+カルシウム拮抗薬
・ARB/ACE阻害薬+利尿薬
・カルシウム拮抗薬+利尿薬
高血圧患者さまは様々な合併症を有することが多く、その病態に応じた適切な薬剤選択が重要です。当院では患者さま一人ひとりの状態を詳しく評価し、最適な治療方針を決定しております。
糖尿病を合併している患者さまでは、腎臓、心臓の保護作用もあり、腎不全、心不全、糖尿病の方にもよく使われるARBやACE阻害薬を第一選択とします。
・ARBまたはACE阻害薬を優先選択
・腎保護効果による糖尿病性腎症の進行抑制
・定期的な腎機能・電解質チェックが必要
狭心症や心筋梗塞の既往がある患者さまでは、心臓への血流改善効果があるカルシウム拮抗薬やβ遮断薬を選択します。
・カルシウム拮抗薬:冠血流改善効果
・β遮断薬:心筋酸素消費量の軽減
・ACE阻害薬:心保護効果
慢性腎臓病を合併している患者さまでは、腎保護効果のあるARBやACE阻害薬が推奨されます。
・ARB/ACE阻害薬の腎保護効果
・蛋白尿の軽減効果
・腎機能に応じた薬剤選択と用量調整
高齢者では薬剤の感受性が高く、副作用のリスクも増加するため、慎重な薬剤選択と用量調整が必要です。
・低用量から開始し、徐々に増量
・起立性低血圧に注意
・認知機能への影響を考慮
アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬(ARB)とアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害)は、妊娠中に使用すると胎児に悪影響が及ぶ可能性があります。
・ARB、ACE阻害薬は妊娠中禁忌
・カルシウム拮抗薬やメチルドパを選択
・妊娠前からの計画的な薬剤変更
降圧薬は安全性の高い薬剤ですが、副作用が生じる可能性があります。当院では副作用の早期発見と適切な対処により、安全な治療継続を支援しております。
・むくみ:特に足首周囲に現れやすい
・歯肉肥厚:歯磨きを丁寧に行い、歯科受診を推奨
・顔のほてり:一般的には軽微で慣れることが多い
・高カリウム血症:定期的な血液検査で監視
・腎機能低下:継続的なモニタリングが必要
・ACE阻害薬特有:空咳が2割から3割の患者さんで認められます
・低カリウム血症:カリウム値の定期チェック
・高尿酸血症:痛風発作のリスク増加に注意
・脱水:特に夏季や高齢者で注意が必要
副作用が疑われる症状が現れた場合は、以下の対応を行います:
・速やかな医師への相談
・症状の詳細な記録
・必要に応じた薬剤変更や用量調整
・代替薬への切り替え検討
当院では患者さまとの密な連携により、副作用を最小限に抑えながら効果的な治療を継続いたします。
・血圧の薬は、毎日同じ時間に飲みましょう
・家庭での血圧が高くなくても勝手に薬を飲むのをやめないでください
・一時的に血圧が下がったからといって、自分の判断で服用を止めたりすると、血圧は戻ってしまいます
・飲み忘れても、まとめて飲まない
・事前に医師と対処法を確認
・規則正しい服薬習慣の確立
高血圧は適切な治療により確実にコントロール可能な疾患です。最新の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、年齢・病態・合併症に関わらず、より厳格な降圧目標が設定されましたが、重要なのは患者さま個々の状態に応じた適切な治療選択です。
治療成功のポイント
・正確な血圧測定と継続的なモニタリング
・患者さまの病態に応じた個別化治療
・適切な薬剤選択と段階的治療アプローチ
・副作用の早期発見と適切な対処
・生活習慣改善との組み合わせ
当院では、最新のエビデンスに基づいた治療により、患者さまの将来的な心血管リスクを最小限に抑え、質の高い生活の維持を支援いたします。高血圧でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。