Grand green
私は内科医として、多くの患者さんの逆流性食道炎の診断・治療に携わってきました。胃食道逆流症は命に関わるような病気ではありませんが、日常生活の質(QOL)にさまざまに影響を及ぼすため適切な対処が必要です。当院では、患者さん一人ひとりの症状に合わせた最適な治療を提供しております。
逆流性食道炎とは、胃液や胃液と混ざった食べ物が食道に逆流することで、食道の粘膜が傷つけられてしまう(炎症が起こる)病気です。
逆流性食道炎の基本的な定義と分類について説明します。
・胃食道逆流症(GERD)の一種で、自覚症状はあるけれども逆流性食道炎のない人(非びらん性逆流症)もいます
・日本人の3〜4人に1人はいると言われております
・食道と胃の境目にある下部食道括約筋の機能低下が主な原因
・胃液に含まれる胃酸はpH 2前後の強酸です
胃食道逆流症には、①食道炎(食道粘膜のただれ)がなく自覚症状のみがあるタイプ(これを「非びらん性逆流症」といい、英語表記 Non-Erosive Reflux Disease からNERD(ナード)とも呼ばれています)、②食道炎があり、なおかつ自覚症状があるタイプ、③自覚症状はなく、食道炎のみがあるタイプの3 種類に分けられます。
GERDの定型症状は胸やけと食道への逆流感(呑酸)の2つであり、この症状が週に2回以上あればGERDと診断する。
・胸やけ(胸がむかむかと焼けるような感じ)
・呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)
・長引く咳や喉の違和感等も逆流性食道炎の症状です
逆流性食道炎の原因は複数の要因が組み合わさって起こります:
・食べ過ぎて胃がはってくると、げっぷを出して胃を減圧させようとLESは弛緩します
・下部食道括約筋(LES)の機能低下
・食道の蠕動運動の低下
甘いものの摂取、喫煙、暴飲暴食、飲酒、食べた後すぐ横になることなども逆流性食道炎の症状を悪化させる原因となります。
・タバコを吸っている方は吸っていない方に比べて1.7倍逆流性食道炎が起こりやすい
・高脂肪食をよく食べる方は食べない方に比べて1.5倍逆流性食道炎になりやすい
・肥満による腹圧の増加
・アルコールやカフェインは下部食道括約筋を緩ませてしまいます
LES圧低下の原因の1つとして食道裂孔ヘルニアが有名です。これにより胃の内容物が食道へとひっきりなしに逆流してしまいます。
当院では段階的な診断アプローチを行っています:
問診では以下の点を詳しく確認します。
・胸やけや呑酸の頻度と程度
・症状の出現タイミング
・食事との関連性
・生活習慣について
胃食道逆流症は、自覚症状と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)により診断されます。
・食道粘膜の炎症やびらんの確認
・一般的に逆流性食道炎の内視鏡分類にはLos Angeles分類が使用されているが、この分類の客観性は高い
・他の疾患との鑑別診断
胃食道逆流症(GERD)の診断の際には、第一選択薬であるPPI(プロトンポンプ阻害薬)を実際に投与し、その効果を確認する「PPIテスト」を行うことがあります。
治療は症状の重症度に応じて段階的に行います:
軽症逆流性食道炎治療においてPPIとP-CABはいずれも内視鏡的食道粘膜治癒をもたらし、軽症逆流性食道炎の第一選択薬として推奨する。
・プロトンポンプ阻害薬(PPI)
・カリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)
・H2 受容体拮抗薬(H2 RA)はPPI抵抗性GERDの補助療法として用いられることが多い
過食や脂肪分摂取過多を避ける、腹圧を上げないなどの食事・生活指導も有効であるが、食事・生活指導だけでは不十分なことが多い。
・食事内容の見直し
・体重管理
・禁煙・禁酒
・姿勢の改善
基本的にPPI抵抗性の症例が外科手術の適応となるが、現在では腹腔鏡下手術が主体となっている。薬物療法で効果が不十分な場合に検討されます。
日常生活で注意すべきポイントをお伝えします:
食べ過ぎや脂肪分の多い食事をはじめ、チョコレートや甘いもの、アルコール、コーヒー、炭酸飲料、柑橘類など、日常的に摂取する食品にも注意が必要です。
・腹八分目を心がける
・ゆっくり食べるようにすると、腹八分目でも満腹感を得られるようになり、満腹感を先のばしにすることにもつながります
・就寝3時間前からの飲食を控える
・消化の良いものを選ぶ
就寝時には頭を高くして眠る(頭位挙上)、腹部を締め付ける服装やベルトを避ける、前かがみの姿勢や重い物を持ち上げる動作を避ける。
・適正体重の維持
・禁煙の徹底
・姿勢の改善
・ストレス管理
胃食道逆流症の患者さんでは、健康な人に比べて日常生活の質(QOL)が低下しているといわれていますので、継続的な管理が必要です。
症状が出た時の対処法と予防策をご紹介します:
キャベツには「ビタミンU(キャベジン)」という成分が含まれており、胃の粘膜を修復し、保護する働きがあります。
・消化の良い食材を選ぶ
・大根には、胃薬にも使用されるジアスターゼが含まれています
・適量の水分補給
・規則正しい食事時間
食後は胃酸の分泌が盛んになります。食後、3時間は横にならないようにしましょう。
・食後の適度な散歩
・デスクワーク時の姿勢改善
・寝る時の体位(左側臥位)
・上半身を少し高くして就寝
医師の指導のもと、適切な薬物療法を継続することが重要です。自己判断での中止は症状の再発を招く可能性があります。
【体験談プレースホルダー:50代男性Aさんのケース】
営業職で外食が多く、胸やけに悩まされていたAさん。当院での胃カメラ検査で軽度の逆流性食道炎と診断。P-CABによる薬物療法と食事指導により、3ヶ月で症状が大幅に改善。現在は月1回の通院で良好な状態を維持されています。
逆流性食道炎は現代人に非常に多い疾患で、適切な診断と治療により改善が期待できます。
・早期発見のための胃カメラ検査が重要
・2021年4月にGERD診療ガイドラインが改訂され、従来のPPIに加えて新規の酸分泌抑制薬であるボノプラザンを加えた治療指針が示された
・薬物療法と生活習慣改善の両輪による治療
・継続的な管理と定期的な経過観察が必要
胸やけなどの逆流症状はQOLを大きく低下させるので、症状を我慢せずに、積極的に治療を受けるべきです。気になる症状がございましたら、お早めにご相談ください。