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大腸内視鏡検査における生検とは、大腸の粘膜を構成している細胞の変化を見るために、その部位から少量の組織を採取することをいいます。私たちはこの検査により、病気の性質を細胞レベルで正確に診断することが可能になります。
・内視鏡を用いて消化管の内部を直接観察している際に、病気が疑われる部分の粘膜組織を、専用の微小な器具でごく少量だけ採取する検査です
・採取した組織の異常を明らかにするために、顕微鏡で組織の状態を観察します
・生検鉗子という内視鏡とほぼ同じぐらいの長さの細長い器具を用い、鉗子を出し入れする場所(鉗子口)から鉗子を挿入し組織を採取します
大腸内視鏡検査における生検の主な目的は、病変の性質を正確に把握することです。私たちは内視鏡で観察した所見に加えて、顕微鏡による詳細な組織診断を組み合わせることで、より確実な診断を行っています。
生検は専用の器具を用いて安全に行われます。生検鉗子はハンドルがついていて先端が開閉できる仕組みになっており、医師は組織を採取する部位を確認してから慎重に操作します。
多くの患者さんが心配される痛みについてですが、採取時に痛みはありません。患者さんとしては、いつ組織を採ったのか分からないという方がほとんどです。食道や胃、大腸といった消化管の粘膜には、皮膚のように鋭い痛みを感じる神経(痛覚神経)がほとんど分布していないからです。
大腸内視鏡検査では、すべての患者さんに生検を行うわけではありません。当院では医師が必要と判断した場合にのみ、この検査を実施しています。
生検が持つ最も重要な役割の一つが、食道がん、胃がん、大腸がんといった悪性腫瘍の確定診断です。大腸の場合、以下のような状況で生検を行います。
・内視鏡検査でがんが疑われる不整な凹凸や色調の変化、出血しやすい病変が見つかった場合
・潰瘍を作っている進行癌を疑う際、特殊な腸結核やリンパ腫など、見た目でわからないことも多いため、生検を行って確定診断を行うことがあります
慢性の下痢や腹痛、血便などを起こす潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)の診断と重症度評価にも生検は欠かせません。これらの疾患では、内視鏡所見だけでなく、組織レベルでの確認が診断の決め手となります。
ポリープには、放置すると将来がん化するリスクのある腫瘍性ポリープ(主に腺腫)と、がん化の心配がほとんどない非腫瘍性ポリープ(過形成性ポリープなど)があります。特に小さなポリープの場合、生検で組織の種類を特定することで、内視鏡的に切除すべきか、あるいは切除せずに経過観察で良いかを正確に判断するための重要な情報を得られます。
当院では大腸と胃で生検の適応が異なることも説明しています。大腸の腫瘍の場合基本的に治療すべきものが多いので、組織検査をすることはあまりなく、そのまま内視鏡治療を行うことが多いです。これに対し、基本的に生検をやることが多いのは胃の病変で、早期の胃がんは非常に見ためで診断が難しいことが多いからです。
検査の精度を高めるためには、前日の食事制限が極めて重要です。食事を抜いてしまうと、腸の動きが悪くなり、下剤を使用してもなかなか大腸がきれいにならないのです。そのようなことにならないよう、大腸カメラ検査前日も3食きちんととることが大切です。
生検自体のために特別な前処置が必要になるわけではなく、基本的には通常の内視鏡検査と同じ準備を行います。通常の大腸内視鏡検査と同様に、腸管洗浄剤の服用により大腸内をきれいにしていただきます。
医師と看護師は、生検を安全に行うため以下の点に細心の注意を払っています。
・周囲に飛散させないよう、腸液や大腸の組織の毛細血管からの血液が付着した鉗子を引き抜く時に注意
・ソフトタッチで行うこと、鉗子を大腸の粘膜に過度な力で触ると出血や粘膜に穴があく穿孔という状態がおこりかねません
・組織をしっかりつかまなくてはなりませんが、あまり強くつかむと組織や細胞が崩れてしまい大切な組織診ができません
患者さんにとっては検査時間がわずかに長くなる以外に、新たな身体的負担や苦痛が増えることはほとんどありません。観察のみの場合と比較して、生検を行っても大幅に検査時間が延長されることはありません。
検査後に医師から「念のため組織を採っておきました」と説明を受けて、初めて生検が行われたことを知る方が大半です。これは、大腸の粘膜に痛覚神経がほとんど分布していないためです。
生検の結果は、通常の内視鏡観察とは異なり、後日詳細な報告が可能になります。当院では患者さんに安心していただけるよう、結果について丁寧な説明を心がけています。
病理検査は、通常1週間から2週間程度かかるため、後日、外来で結果説明を行います。病理組織診断は専門の検査機関にお願いすることが多く、内視鏡検査を担当した医師のもとへは7日〜10日ほどで病理組織診断の結果が来ます。
検査機関の混雑状況により前後することがありますが、組織採取をした場合は、検査後に次回の外来予約を取り、病理結果が出たタイミングで詳しい説明を受けることになります。
大腸のなかが綺麗になった目安は、便が【白色透明もしくは薄い黄色透明】の病理組織診断は様々な病気の診断における最終的な答え、いわばゴールデンスタンダードと位置づけられています。具体的には以下のような情報を得ることができます。
・病変が良性か悪性かという最も重要な判断はもちろんのこと、がんである場合はその種類(腺がん、扁平上皮がんなど)
・病変が炎症による変化がある場合には、その病態や原因、炎症の程度
・病変がなんらかの腫瘍であることが疑わしい場合には、細胞の形や細胞が集まって作られる組織の構造が正常と比較してどの程度違っているのか(異型度)
生検の結果はGroupという分類で5段階評価されます。1-5で判定結果が返ってきます。当院では、この結果と内視鏡所見を総合的に判断し、今後の治療方針を決定しています。
生検を行った後は、いくつかの注意点があります。私たちは患者さんの安全を最優先に、以下の指導を行っています。
通常の診断目的の生検(組織を数カ所採取するだけ)であれば、入院の必要はなく、完全に日帰りで検査が可能です。ただし、以下の点にご注意ください。
・組織やポリープをとった方は、医師の指示により一定期間消化の良い食事をしてください。刺激物、脂っこいもの、アルコール類は避けてください
・組織やポリープをとった方は、医師の指示によりしばらく激しい運動をひかえていただきます
食道や胃、大腸といった消化管の粘膜は、体の中でも特に新陳代謝が活発な組織です。生検でできる傷は皮膚でいえばほんのわずかな擦り傷のようなものですので、通常は数日から1週間程度で粘膜上皮が再生し、きれいに治癒します。
当院では、生検後に以下のような症状がある場合は、すぐにご連絡いただくよう説明しています。
・検査後、便に少量の血が混じることがありますが、出血量が多くなかなか止まらない場合や、痛みが続く場合
・黒い便、血の混じった赤い便が出た場合は、生検したところから血が出続けていることがあります
消化管粘膜生検の主な合併症は、生検した場所からの出血と穿孔です。誰でもわずかな出血はありますが、自然に止まることがほとんどです。重篤な合併症の発生は極めて稀ですが、万が一の場合に備えて適切な対応を準備しています。
ここでは、当院で大腸内視鏡検査と生検を受けられた患者さんの実際の事例をご紹介します。プライバシー保護のため、詳細は変更していますが、検査の流れや結果について理解していただけるよう配慮しています。
50代男性の会社員の方で、健康診断の便潜血検査で陽性となり、精密検査として大腸内視鏡検査を受けられました。検査では直腸に約8mmのポリープが発見され、その場で生検を実施しました。痛みは全くなく、検査後に「組織を少し採取しました」とお伝えしたところ、「いつ採ったのか全然分からなかった」との感想をいただきました。約10日後の結果で腺腫(良性のポリープ)と判明し、後日内視鏡的切除を行い、現在は定期的な経過観察を続けています。
30代女性で、数ヶ月間続く血便と下痢のため受診されました。大腸内視鏡検査では直腸から左側結腸にかけて軽度の炎症所見を認め、複数箇所から生検を実施しました。検査自体は15分程度で終了し、患者さんも「思っていたより楽だった」とおっしゃっていました。2週間後の病理結果で軽度の潰瘍性大腸炎と診断され、適切な治療により症状は改善しています。現在は寛解維持のための治療を継続中です。
40代男性で、ご家族に大腸がんの既往があるため、症状はありませんでしたが検査を希望されました。検査では盲腸に平坦な病変を発見し、拡大観察の後に生検を実施しました。患者さんは「念のため組織を調べる」という説明に最初は不安を感じられましたが、結果は炎症性の変化のみで悪性所見はありませんでした。現在は年1回の定期検査で経過観察を行っています。
大腸内視鏡検査における生検は、正確な診断を行うために重要な検査手法です。当院では、患者さんの安全と診断精度の向上を両立させながら、この検査を実施しています。
生検とそれに続く病理組織診断は、消化器領域における多種多様な疾患の確定診断に貢献します。内視鏡による視覚的な情報と、病理組織診断による細胞レベルの情報を組み合わせることで、より深く正確な診断が可能になります。
・がんや腫瘍の確定診断における【ゴールデンスタンダード】としての役割
・炎症性腸疾患の診断と重症度評価への貢献
・ポリープの性質判定による適切な治療方針の決定
生検は決して独立した検査ではなく、胃カメラや大腸カメラといった内視鏡検査の一連の流れの中で、医師が必要と判断した場合に追加的に行われる手技です。痛みはほとんどなく、検査時間の延長も最小限に抑えています。
病理検査の結果は約1〜2週間で判明し、その結果に基づいて今後の治療方針や経過観察について詳しく説明いたします。私たちは患者さんが安心して検査を受けられるよう、丁寧な説明と適切なフォローアップを心がけています。
大腸内視鏡検査での生検について不安や疑問がございましたら、遠慮なくお尋ねください。早期発見・早期治療により、多くの大腸疾患は良好な結果が期待できます。