Grand green
胃カメラ検査の際に粘膜に通常と異なる変化を認めた場合、粘膜の一部を鉗子という処置具で少しだけつまみとり(生検といいます)、病理医による顕微鏡検査での診断を行うことを病理組織検査といいます。当院では、患者さんの安全と確実な診断を最優先に考え、胃カメラ検査を実施しています。
・粘膜表面には神経がないため、生検自体での痛みはありません
・採取した組織は専門の医師により顕微鏡検査による病理組織検査を行い、約2週間程度で結果が報告されます
・生検は検査の一連の流れの中で行われるため、新たな身体的負担はほとんどありません
・病理組織診断は様々な病気の診断における最終的な答え、いわばゴールデンスタンダードと位置づけられています
私たちは内視鏡専門医として、肉眼的な観察だけでは判断しきれない場合に、適切な判断のもと生検を実施しています。
生検を行う目的は良性か悪性かの判断、原因の特定、がんの種類の詳細な分析の3つに分けられます。
・【がん細胞の有無の確定】:胃カメラで観察した病変が、見た目だけでは良性か悪性かを判断できない場合があります
・【感染症などの原因特定】:胃潰瘍や慢性胃炎などの病変について、ピロリ菌などの感染症が原因かどうかを調べることができます
・【治療方針決定のための情報収集】:がんと診断された場合、がんの種類を詳しく調べ、適切な治療方針を決定するために重要です
当院での経験から、生検により以下のような疾患の診断が可能です:
・早期胃がん・進行胃がん
・胃腺腫(前がん病変)
・慢性胃炎・萎縮性胃炎
・ピロリ菌感染の有無と程度
・胃ポリープの良性・悪性判定
・胃MALTリンパ腫などの悪性リンパ腫
内視鏡医は粘膜に発赤、褪色、隆起、陥凹など正常とは異なる所見を認めた場合には、内視鏡で十分に観察をしたのちに生検を行います。私は内視鏡専門医として、以下の原則に基づいて生検の適応を決定しています。
・【強いがんの疑い】:明らかに悪性を疑う形態学的特徴を認める場合
・【鑑別困難な病変】:がんかどうか内視鏡所見だけでは見分けが難しい場合
・【念のための確認】:がんの可能性は低そうだが、念のため行う場合
当院では、以下の内視鏡所見を認めた際に生検を検討します。
・粘膜の色調変化(発赤・褪色・白色調変化)
・表面構造の異常(隆起・陥凹・不整形)
・血管パターンの変化
・インジゴカルミンなどの色素散布やNBI(狭帯域光観察)での詳細観察結果
私はそのリスクに見合った効果がない生検はすべきでないと考えていますので、十分な検討のもと適切な生検を実施いたします。
以下の場合は生検を控えることがあります。
・明らかに良性と判断される病変
・出血リスクが高い患者さん(抗凝固薬服用中など)
・患者さんの全身状態が不良な場合
詳細な観察の結果生検による組織診断が必要と判断されると、医師は内視鏡の先端にある処置具の通り道(鉗子チャンネル)から、生検鉗子と呼ばれる非常に細長い器具を送り込みます。
・【観察段階】:医師はモニター画面に映し出される消化管の内部を、空気や二酸化炭素を送気して広げながら隅々まで観察します
・【詳細確認】:色素散布や特殊光観察による病変部の詳細観察
・【組織採取】:生検鉗子を用いて適切な部位から適量の組織を採取
・【止血確認】:採取部からの出血の有無を確認
患者さんにとっては検査時間がわずかに長くなる以外に、新たな身体的負担や苦痛が増えることはほとんどありません。
・粘膜表面に痛覚はないため、組織採取時の痛みはありません
・検査時間の延長は通常5-10分程度です
・生検自体のために特別な前処置が必要になるわけではなく、基本的には通常の内視鏡検査と同じ準備を行います
当院では、採取した組織は以下のように厳重に管理されます。
・専用の固定液に即座に保存
・適切な検査機関への迅速な搬送
・病理専門医による詳細な顕微鏡検査
・約2週間後の結果報告
胃カメラ検査時に生検を行った場合、検査当日の食事は脂っこいものや刺激物の摂取は控え、アルコールの摂取も控えてください。
・【食事制限】:検査中に組織採取を行った場合には、消化しやすいものを食べ、油ものだけでなく、アルコールや唐辛子のように刺激の強い香辛料を避けましょう
・【推奨食品】:おかゆ、うどん、豆腐、白身魚、卵など消化の良いもの
・【避けるべき食品】:揚げ物、焼肉、カレー、キムチ、炭酸飲料など
特に胃カメラ検査の時にピロリ菌検査や生検(組織をとる検査)をしたときには、まれに出血することがあります。胃から出血すると便が「黒く」なります。
・便の色の変化(黒色便)に注意
・腹痛や吐き気などの症状が続く場合は連絡
・万が一便が黒いことがあれば、至急医療機関に連絡を入れてください
検査翌日からは、食事内容もアルコールも制限はありません。
・通常の日常生活に戻れます
・入浴・シャワーも制限ありません
・仕事や運動も問題ありません
当院で経験した症例をご紹介します。
健康診断で胃炎の指摘を受け当院を受診。胃カメラで前庭部に軽度の発赤を認めたため、念のため生検を実施。結果はピロリ菌陽性の慢性胃炎で、除菌治療により改善されました。
胃の不快感で受診され、胃カメラで体部に小さな隆起性病変を発見。生検の結果、早期胃がんと診断され、内視鏡的切除術により完治されました。早期発見により体への負担も最小限でした。
ピロリ菌除菌後の定期検査で、わずかな粘膜の変化を認め生検を実施。結果は異常なしでしたが、「安心できた」と喜ばれました。
このように、生検は確実な診断と患者さんの安心につながる重要な検査です。
生検結果はGroup分類で報告され、Group3以上がでたら基本的に治療をおすすめしています。
・Group1-2:良性または正常範囲
・Group3:腺腫の疑い(前がん病変)
・Group4:悪性の疑い
・Group5:悪性(がん)
生検でGroup3でも治療後の最終診断が癌だった症例は半数程度でしたという報告もあり、当院では以下の方針で対応します:
・【Group1-2】:定期的な経過観察
・【Group3-4】:詳細な検討と治療方針の相談
・【Group5】:速やかな治療計画の立案
もし、胃カメラと生検を受けても原因がわからない場合には、再検査をおすすめします。
診断不適材料や炎症反応が強い場合など、確定診断に至らない場合があります:
・時間を置かない再検査が必要な場合
・炎症軽減後の再検査が適切な場合
・より詳細な検査(拡大内視鏡など)が必要な場合
胃カメラにおける組織検査(生検)は、確実な診断のための重要な手段です。病理組織診断は様々な病気の診断における最終的な答え、いわばゴールデンスタンダードと位置づけられています。
・【安全性】:痛みはなく、合併症リスクも低い安全な検査
・【正確性】:肉眼的観察だけでは判断できない確定診断が可能
・【重要性】:早期がん発見や適切な治療方針決定に不可欠
当院では、患者さんの不安を最小限に抑えながら、必要に応じた適切な生検を実施いたします。生検を受けると、無症状で見過ごされる可能性のある早期のがんを発見し、治療の機会を増やすことができます。
検査前後の注意事項を遵守していただくことで、より安全で確実な検査結果を得ることができます。何かご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。